鍵人対談 損保保険ジャパン日本興亜

トラック業界”鍵人”訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第6回

損害保険ジャパン日本興亜株式会社 野村 幸一郎 様

損害保険ジャパン日本興亜株式会社 野村 幸一郎 様

「まず事故を防止する視点から。保険の未来が見えてくる!」

トラック業界にとって事故は、なくならない悩みのひとつです。その備えとして保険がありますが、最近の保険はかつての保険とはちょっと様子が違うよう。万が一の事故のための保険から、事故を防止するための保険へ。そんな保険の未来はテクノロジーの進化とともに、どんどん変わっていきます。保険の未来を知ることは、トラック業界の未来を知ることかも知れません。第6回目となる今回は損害保険ジャパン日本興亜株式会社の野村 幸一郎様を訪ね、トラック業界における保険の現在と将来の展望をうかがってきました。

写真・薄井一議
デザイン・大島宏之
編集・青木雄介

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当たり前だった「保険に入らない」という選択


―――まず運送業界と保険について考えると、そもそも「加入しているか、いないか」という根本的な話になってしまいがちです。事業者なら入っていて当たり前と思われる自動車保険ですが、10年ほど前だと車両台数を多く抱えてる大手ほど保険に入らずに、事故の専任担当者を置いて社員が事故処理や示談交渉を行っていたりしていました。最近の加入率は上がってきているのでしょうか?

中西:はい。弊社のサービスでいうと、保険料を最初にリース料の中に組み込んで、整備も保険も込みでという販売が浸透してきているので、加入率は年々高まっていますね。前よりは普及してきた印象です。

野村:確かに以前は、運送関係のお仕事をされている企業さんは自家保険という形で、何かあれば自分のところで対応されるというケースが多かったですね。ただこの10年での保険加入率はどんどん高まっています。対人賠償だけつけられている事業者様、対人・対物賠償だけをつけられている事業者様、車両の保険もフルカバーでつけられている事業者様とその差はまだまだあるにせよ、確実に保険を利用する事業者様が増えているのは間違いないですね。

事故を防止するための保険


____それはいい傾向ですね。理由としては保険の内容が変わってきているからでしょうか?

野村:当社に限らずですが、現在の保険は事故を起こしたらどう対応するかという目的よりも、「いかに事故を起こさないようにするか」、そのために「どんなご支援を保険会社が提供していくか」という視点でサービスを提供しようとしています。事業者様から見れば、事故防止をメリットとして感じていただけているのと、事故が多い事業者様は特に、その事故対応で費やす時間と人件費を考えると、保険会社や共済の保険に入っていた方が、メリットがあると感じていただけるようになってきました。それに加えて事故防止のサービスを受けられるという認識が、ここ最近は浸透してきたのではないかと思いますね。

____それは興味深いですね。事故防止に関わるサービスとは、具体的にどんなサービスがあるのでしょうか。

野村:我々の会社では「スマイリングロード」(http://www.sjnk.jp/hinsurance/smilingroad/pc/ )という事故防止サービスを提供しています。ドライビングレコーダーを安価で提供させていただいて、車両に装着していただきます。そのドライビングレコーダーを通して、ドライバーの安全運転のご支援をしたり、管理している事業者の方々ともつながって、「いまドライバーがどんな運転をしてどんな状況にあるか」という情報を管理者の方々とリアルタイムに共有します。さらに弊社の独自のサービスでは、管理者の方からドライバーに向けて「いま安全に運転しているね」と評価してあげられたり、社内でドライバーさん同士で安全運転を競いあえるような仕組みを導入しています。

____安全運転を競いあうのはいいですね。

野村:はい。こちらは評価も上々で、実際に「事故が2割ぐらい減った」など、実証的なデータも出始めているんです。もっと事業規模の大きい事業者様ですと、スマイリングロードの大型車版のようなサービスも始まっています。例えば、事故が多発している交差点を通過するような場合には自動的に警告をしたり、長時間運転が続くと注意喚起のアラートを発して居眠りや注意散漫になるのを防ぐようなご支援をさせていただいています。これらのサービスはまさに事故防止の取り組みにつながっていくだろうと思います。まずは事故を起こさないようにしていただくというサービスですね。

事故防止の取り組みが保険料を下げる

____なるほど。その取り組みは新型トラックで導入が進んでいる事故予防だったり安全運転に関するマネージメントシステムに近いですね。その取り組みによって事故を起こさないようにするからこそ、保険の価格に反映されて入りやすくなっているのでしょうか。

野村:価格の面でいうと、入りやすくはなってきたと思います。弊社独自のサービスでいえば10台以上の車両をお持ちになっているお客様を、フリート契約者様といいますが、この場合、1年間に起きた事故でお支払いした保険金のボリュームと、お預かりしている保険料の割合で、損害率を計算して翌年の割引率を決めていくのが通例です。そこで万が一、レッカー移動が必要になった場合、弊社ではその費用はお支払いしている保険金に含めずに計算して、その分、損害率が低く算出されることによって、少しでも割引が効くような形で保険をご提供しているような事例であったり、まだ運送業界には適用できていないのですが、来年1月から衝突安全ブレーキが搭載されている乗用車に関しては9%程度、保険料を割り引くことが出来るようになります。現在は自家用車に関してだけですが、いずれ商用貨物車にも拡がっていくだろうと考えています。

____まずは個人の車両向けからなんですね。

野村:はい。実際には圧倒的に商用貨物車以外の割合が大きいので、自家用車でデータがとれてくると次は商用貨物車に適用という流れですね。同じようにドライビングレコーダーでは個人の運転特性が分かるようになります。そのデータがとれることで、自動車保険に入るときも、診断結果の良い方は最大20%割引ぐらいから入れるようになります。これも個人向けの車両に関しましては、今年度中から「始めよう」ということで、今後だんだん適用される車両の範囲は広くなっていくと思います。

事故は減ったが、修理代が高くなる傾向に

____では未来の保険について話しましょう。その傾向について聞かせてください。

野村:まず、この個人の運転特性をデータでとりながらそれを保険料に反映していこうという流れが加速すると思います。テレマティクス(移動体通信システムを利用したサービス)やビッグデータを活用しながら。個人の生命保険でも、個人の健康状態を判断するのにウェアラブル端末を付けることで保険料が変わってくることが当たり前になるでしょう。そのようなデータで可視化できるリスクが保険料率を変えていく流れと、安全装備の進化に合わせた保険が登場してきますね。自動ブレーキを皮きりに、自動運転や、技術革新にともなって保険も変わっていきます。

中西:そう考えると、事故って確実に減ってきてますよね。

野村:減ってきています。ただ一方で修理単価は高くなっている傾向があります。コンピューターで制御されている車両が増えているのもありますし、工賃も割高になっていますね。これで自動運転が現実化して車両同士がぶつからないようになると、保険料も大幅に変わるとは思うのですが、自動運転の車両とドライバーが運転する車両が混在する時期は、自動運転の車両に想像もしないリスクが伴うかも知れません。完全に自動運転が実現されて事故がなくなった世界になっても、サイバー攻撃でコントロール不能になってしまうリスクなど新しいリスクが発生するのだろうと思います。それに対応する保険も出ると思いますし、人間が生きている以上は何らかのリスクが発生して、保険がカバーしてということが繰り返されていくんだと思いますね。

課題や悩みを解決する手段としての保険とは

____保険の低価格化というのは、われわれ一般の自動車ユーザーにも実感できるところですね。外資も入ってきて、インターネットで安く加入できる上、ロードサービスも受けられたり、身近に感じられるところです。ヨシノ自動車さんもそうですが、そういった中、あらためて保険代理店の存在理由について、お聞きしたいのですが。

中西:はい。弊社の本業はトラックを売ることですが、ただ売るだけだとお客さんとの接点が購入いただけるときだけになってしまうんです。保険代理業は「それ以外にもお客様といかに多くの接点を持つか」という目標のひとつなんですね。保険であれば運送事業者さんなら100%対象になります。その意味では規模は関係なしに、いつでも提案できる機会がある。そこにはトラックを販売するだけではなく、数多くのメリットが生み出されるから取り組んでいるということになります。

____ヨシノ自動車さんはトラック販売だけでなく保険もあるし、整備部門もありますよね。それは単純なシナジー効果だけではないですよね。

中西:はい。この春に若手の新人が入ってきたときに話したのは、結果的にトラックを販売するということが弊社の事業の大きな柱ではあるのですが、あくまでも「トラックを使っている事業者さんが何か課題や悩みを抱えていたとして、それをどう解決できるかサポートするのが本業である」と。その解決策がトラックを売ることであればトラックを販売しますし、保険で問題がカバーできるのであればトラックを販売しなくてもいい。そこがヨシノ自動車の代理店としての存在理由ということになると思います。

野村:おっしゃる通りだと思います。ここまでは車両に関わる話が中心でしたが、運送事業者様に車両を納車したり、保険を販売するときというのは必ずしも車両の保険だけではないんですね。現在の運送業界を取り巻く問題でいえば、運転手が不足しているとか、長時間労働で労働環境が厳しいとか、万が一、労災事故が起こって、会社が訴えられたときのために保険がカバー出来たりとか、荷物に対する保険であったり、従業員の生命保険であったり、経営者のための生命保険であったり、そういう事業者様の個々の悩み事にヨシノ自動車さんはまず共感していただけるんですね。そして解決できる手段を持っているんです。そんな色々な悩み事を解決していく手段のひとつに保険がある、ということ。リスクに対して保険はあるので、そこを提案できる点に保険代理店の重要な存在理由がありますよね。

トラック専業ゆえの強みはコンサルタント力

____事業環境に精通していて、トラックのプロフェッショナルであるがゆえに、提案できることがある訳ですね。

野村:そうです。ヨシノ自動車さんであれば、地元という地の利だったり、トラックというひとつの分野に詳しい方が、お客様に寄り添っていただきながら問題解決のために、保険サービスをご提供いただいています。これは我々には出来ないことなんです。そこに価値がありますし、お客様からしても何かが起こって保険会社といろいろ交渉しなければいけないときに、直接、保険会社には言いにくいものなんですよね。お互い分かりませんから、我々もダメなものはダメと言わなければいけませんし、折衝という意味でお客様からすると保険会社は遠くに見えるんですよ。やっぱりよく分かっている保険代理店さんが間に入っていただいて、お客様が無理を言ってきたときは「そうではないですよ」と優しく説明していただいたり、逆に本当に困っていることに対して、親身に保険会社に代弁してくださったり、保険代理店の価値は計り知れないですよね。

中西:あらためて代理店の価値は大きいですよね。我々が代理店をしているからではなくて、個人の実感としてです。ちょうど一ヵ月前に私自身がトラックに追突されて事故をもらってしまいました。そのときにも110番の次に、真っ先に電話したのは保険代理店でした。保険会社のサービスコールなども車検証には書いてあるんですが、事故直後のもうろうとした頭で電話したのは保険代理店でしたね。それは普段からのコミュニケーションがあるからで、いざというときに頼りたくなるんですよね。

____動揺しているからこそ、親しい人に「聞いてほしい」という感覚だったんでしょうか。

中西:うーん。中立の立場の人に聞いて欲しいと思ったんですね。その事故は100%こちらに落ち度のないケースだったので、保険会社に直接連絡しても「お願いしますよ」で済むのですが、例えばそれが自分にも非のある事故だったりすれば、あんまり強くは言えなくなってしまいますよね。そうすると逆に言いづらいことを、代理店が中立的立場で言ってくれるかな、と頼りたくなる気持ちが絶対あると思うんです。その間に立って、両者の間を取り持つのが代理店の役割でもあるんですね。

運送業界における「保険」の意味を問い直そう

____分かりました。あらためて運送業界で保険が果たす役割についてお聞かせください。

中西:経営をする上で保険は必要不可欠だと思っていますね。特に運送事業は必ず人の操作が介在するので、事故がゼロになることは僕が生きている間はないだろうと思っています。そのリスクを軽減する保険というのは無くならないと思っていますので、ヨシノ自動車としても車両保険だけではなくて、労災保険や貨物への保険、働く環境に応じた保険を提案しています。働くことというのは、常にリスクが伴っていますよね。

____それが企業となると、あらゆるリスクが対象になりますからね。

野村:運送業界という観点で、今以上に保険が普及していかなければいけない不変の価値としては、中西社長がおっしゃられたように経営の安定を目指すものであるということと、社会の信用だと思うんですよね。ある程度の事業規模でされている運送事業者さんが万が一、事故やトラブルを起こしたときに、「うちは保険にはいっていません」というのは認められないと思いますね。それは事業を安定的に経営していく上で不可欠の要素と言えますし、相手側に納得できる、充分な補償をしてあげるためにも保険を利用できない企業は、どうしても世の中では問題視されてしまうだろうと思いますね。

野村 幸一郎(のむら こういちろう)
1962年4月12日生まれ。1985年3月 慶応大学 法学部卒業。同年4月安田火災海上保険株式会社入社。2016年4月 損害保険ジャパン日本興亜株式会社 理事 横浜中央支店長就任。現在に至る。

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