
トラック業界"鍵人"訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第109回
株式会社 友善商事 代表取締役社長 小笠原 博美 様
株式会社 友善商事
代表取締役社長
小笠原 博美 様

トラック業界"鍵人"訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第109回
株式会社 友善商事 代表取締役社長 小笠原 博美 様
株式会社 友善商事
代表取締役社長
小笠原 博美 様
「石巻から物流を支える部品商。友善商事がつくる「人が育つ会社」とは」
宮城県石巻市。かつてはデコトラ文化でも知られた港町であり、東北の物流を支えるトラックが行き交う街です。その石巻で半世紀以上にわたりトラック部品を供給し続けてきたのが友善商事です。純正部品からリビルトパーツまで幅広く扱い、地域の運送会社や整備工場を支えてきました。震災を乗り越えながら拠点を広げ、いまでは東北の物流を支える存在となっています。デコトラ文化からユーロトラックへの変化、地方ディーラーネットワークの課題、そして震災後の物流の現実。現場を知る人々の対話から、地方物流のリアルが浮かび上がります。そしてもう一つ、この会社には特徴があります。それは女性社員が多く、子育てを経ても長く働き続ける人材が会社を支えていることです。トラック業界では珍しい女性経営者として、地域と人材をどう見つめているのか。石巻の現場から、友善商事の経営を探ります。
編集・青木雄介
WEB・genre inc.
小笠原博美(おがさわら ひろみ):
株式会社 友善商事 代表取締役社長。
1960年 宮城県石巻市生まれ。1984年に株式会社友善商事へ入社。2010年7月代表取締役就任。現在は仙台市在住。

ーーー友善商事の創業の経緯について教えてください。
小笠原:私が三代目で、今年で創業53年になります。父が始めた会社で、最初は採石場をやっていました。その採石を運ぶダンプの会社をやり、さらにダンプを整備する整備工場を始め、その整備工場に納める部品の販売会社を作ったという流れです。


ーーー石巻といえばデコトラで有名ですが、当時はそういったパーツも扱っていたのですか?
小笠原:そうですね。映画シリーズ「トラック野郎」が人気だった頃は行灯などを、店頭でもかなり幅を取って飾っていました。当時はどれだけ飾っても問題がなかったので、店に来る運送会社さんが会社の経費で買われることも多く、扱っている商品の半分くらいはデコトラパーツでしたね。
ーーー現在のトラックの装飾事情はいかがですか?
小笠原:今は飾ったトラックが来ると、荷主から「うちの会社に集荷に来ないでほしい」と言われてしまうこともあるそうです。そのため、飾らないか、もしくはボルボやスカニアといったヨーロッパ系のトラックに乗る流れになりました。時代の流れとして、デコトラからヨーロッパスタイルに変わってきていると思います。
ーーーかつてはデコトラ、今はユーロという流れが見えてきますよね。
アルフレッド:友善商事さんとは、もう5年くらいのお付き合いになりますが、その頃からユーロ系には興味を持たれていたと思います。きっかけはKWDさんの紹介でした。奈良で行われたセノプロさんのイベントのあと、食事の席でお会いしたのが最初です。
小笠原:そうでしたね。奈良のイベントのあとでした。
アルフレッド:石巻ではまだボルボは多くないのですが、「ボルボにスライドカプラーを付けよう」という話がきっかけになりました。

ーーーボルボやスカニアなどの欧州トラックの普及状況はいかがですか?
小笠原:まだ少ないですね。ただボルボはUDさんで販売が始まっているので、少しずつ増えてきています。スカニアなどを見かけると「おお」と思うくらいの台数ですが、ドライバーのために買うとか、求人のために導入する会社もあります。ただ、やはり価格の問題は大きいですね。
アルフレッド:私のほうからファストエレファントの販売店の話をさせてもらって、最終的に販売店契約を結びました。それでユーロ系の商品も扱うようになりました。ただ、ユーロ系パーツの取り扱いは、セノプロさんの方が先でしたね。



ーーー東北地域でのボルボ普及の課題は何ですか?
中西:東北はまだ手薄で、仙台より北はこれからという状況です。フルディーラーがなく、基本的にはUDのチャンネルで販売されています。アフターサービスも、拠点はあっても実際にボルボを整備できる人は限られているのが実情です。実際には、5拠点あってもボルボを見られる人が1拠点にいるかどうかという感じですね。
アルフレッド:整備士というのは、やはり台数をこなして育つものなので、数が少ないと技術もなかなか育ちません。
ーーーなるほど。
アルフレッド:珍しい故障が出ると「どうやってやるんですか」と相談の電話が来ることもあります。スピードメーターの校正なども、やり方が分からないということがありますね。

ーーーちなみにUDって、今はエンジンもボルボと共通ですよね。
中西:そうですね。今のクオンもシフトであるエスコットは、ボルボのアイシフトです。名前は違いますが、中身はかなり共通化されています。でもあまり売りたがらない。そうすると整備も広がらないという構造的な問題があります。

ーーーそれだと広がらないですよね。友善商事さんの主力事業について教えてください。
小笠原:純正部品を中心に、ほぼ全メーカーの部品を扱っています。大型トラックがメインですが、小型トラックや乗用車、輸入車の部品も扱っています。リビルトパーツもあり、隣の工場ではライニングの張り替えなども行っています。この地域では対応できるところが少ないので、重宝されています。


アルフレッド:友善さんが取り扱っている代理店の数はかなり多いですよね。
小笠原:気がついたら増えていましたね(笑)。
ーーー取り扱い代理店が多いのは戦略でしょうか? 貴社に入って酸素室やケルヒャーの洗浄機が展示されていて扱われている商品の幅広さに驚かされました。
小笠原:この業界は仕入れ先を絞る会社も多いのですが、私は昔から「何でも扱います」というスタンスです。お客様が注文すれば、とりあえず何でも取る。「取り扱いがないのでお断りします」ということは基本的にありません。

アルフレッド:友善さんは拠点の数を増やしているのも特徴ですよね。
ーーー複数拠点を展開する狙いは何でしょう?
小笠原:弊社は仙台、古川、気仙沼に拠点があります。近いほうが部品の供給が早いからです。一時は在庫を減らす方向でしたが、今はスピードが重要なので在庫はむしろ増やしています。
中西:パーツのビジネスって、実はレンタカーと似ているんですよ。レンタカーって基本は10キロ圏内が商圏なんです。遠くに安い店があっても、わざわざ借りに行かない。部品も同じで、近いところに在庫があって、すぐに届けてもらえるというのが一番大事なんです。だから拠点の距離というのはすごく重要なんです。


ーーーだから拠点が多くなるんですね。なるほど、現在の石巻の景気状況はいかがですか?
小笠原:あまり良くありません。石巻は港町なので、魚が揚がらないと経済が回らないんです。復興事業で2〜3年前までは良かったのですが、それが一段落して、建設やダンプの仕事も静かになっています。倒産する会社もありますし、廃業する会社も増えています。
中西:震災のあと、頑張っていた会社も多いんですが、やはり厳しい状況はありますね。例えば川崎にダンプやレンタルをやっていた会社があったんですが、社長のお父さんが震災のとき津波で亡くなってしまったんです。それで地元の同級生たちが「仕事を出すよ」と言ってくれて、一時はかなり忙しくなりました。でもこの前会ったら、「実はもう会社を閉めたんだ」と言っていました。二年くらい前ですね。
ーーーそうなんですね。
中西:復興の仕事が終わると、どうしても需要が落ちますからね。いま東北の運送会社は厳しいところも多いと思います。



ーーー友善商事さんならではの特徴を教えてください。
小笠原:弊社は女性社員が多いのが特徴です。子どもを産んで戻ってくる社員も多いです。子どもが熱を出して休むこともありますが、「自分たちが働かなければ会社が回らない」という意識が強く、よく働いてくれます。売上を大きく伸ばす人もいますね。
ーーー女性が働きやすい環境づくりで、意識していることはありますか。
小笠原:時短でもいいですし、子どものことで何かあれば遠慮なく休んでいいよ、という体制にしています。迎えに行かなければいけない時間まで、本当に一生懸命働いてくれるんです。結果として、売上を見てみると男性社員と同じくらいになっていることもあります。以前は残業も多かったのですが、今はほとんどなくなりましたね。
中西:実際、長く働いて戻ってくる人が多い会社は強いですよね。
小笠原:そうですね。女性は本当に大きな戦力だと思っています。
ーーー管理職の登用についてはいかがですか?
小笠原:来期から女性の拠点長を一人任命する予定です。子育て中はどうしても制約がありますが、子どもに手がかからなくなると、本当に力を発揮してくれます。ですから、女性には長く働いてほしいと思っています。
ーーー女性を大切にする社風なんですね。そもそも小笠原社長の就任はどんなきっかけだったのでしょうか?
小笠原:2010年に社長を継ぎました。私は五人姉妹の末っ子で、姉たちも会社に入っては結婚して出ていくという状況でした。結婚のときに反対されて8年ほど会社を離れていましたが、姉と母が亡くなり、後継ぎがいなくなったため戻りました。
ーーー東日本大震災の少し前ですね。震災の影響はいかがでしたか?
小笠原:はい。社長を継いで1年も経たないうちに震災が起きました。当時は社員が8人しかおらず、拠点も石巻だけでした。それでは危険だと感じ、多拠点展開を始めるきっかけになりました。
ーーーでは今後の展望について教えてください。
小笠原:ネット販売を強化していきたいと考えています。発送体制を整えて、ファストエレファントさんのパーツなども全国に販売していきたいですね。
