株式会社ヨシノ自動車

トラック業界”鍵人”訪問記 ~共に走ってみませんか?~ 第49回

株式会社トラック市 代表取締役社長 小川 広太郎様

株式会社トラック市 代表取締役社長 小川 広太郎様

「激変する市場を生き抜くために。国内最大級のトラック市が考える中古トラックのブランド化とは?」

年間トラック販売台数 約13,000台。年間売上約1,200億という中古トラック業界で最大級の取引量・売上を誇るトラック市グループ。今年で創設から27年を迎え、国内初の商用車専門全国FC組織として、加盟店は185社にのぼります。ヨシノ自動車も加盟するトラック市ですが、今回はその全国展開するメリットや選ばれる理由について探っていきます。さらには業界初となった中古トラックの保証制度、Tプロテクトや研修制度を充実させることによっての中古トラックの差別化とブランド化など、その実態にも迫ります。現在の中古トラック市場の環境や、中古トラックの将来的な展望についても占いました。業界関係者必見の内容です。

WEB・genre inc.
編集・青木雄介

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確立された「トラック市」の組織マネージメント

____ヨシノ自動車も加盟しているトラック市ですが、最初に中西社長の印象を教えていただけますか。

中西:加盟してから10年ぐらい経ちますが、その前からトラック市という存在は知っていました。それまでは小型バントラ型の、乗用車も扱っている埼玉の同業者さんを中心に作られた組合という印象でした。それも共通の看板を使って、フランチャイズ方式でやっていくということだったので、なんとなくロータス(全国的な整備組合組織)と「似ているな」という印象でした。そんな中、トラック市に加盟されている弊社とも非常に懇意にしている同業者さんがいらっしゃって、その方に誘われて入会しました。トラック市は全国に広がっているんですよ。この4~5年でトラック市という組織が、非常に確立されてきた印象があります。

____なるほど。

中西:他の団体に入っていて思うのは、だいたい良くも悪くも同業者の集いなんです。でもトラック市さんは、ビジネスとして集合している印象があるんですね。情報共有も確かだし、会員のメリットをちゃんと考えてくれている気がする。会費に見合うメリットを提供するということをちゃんとやってきているから、特にこの4~5年でその付加価値が高まっている気がするんです。

中古トラックの保証、Tプロテクトの始まり

____分かりました。本日はトラック市さんならではの中古トラックの付加価値、価値提供について話し合いましょう。まず中古車の保証プログラムであるTプロテクトについて。そもそも故障リスクの高い中古車に対して保証を付けるというのは、なかなかチャレンジングな試みだと思うのですが。

小川:そうですね。私自身がトラック市に入ってもう12年になります。トラックを勉強しながら、会員さんの話を聞いていくうちに、乗用車に保証はあるのに、トラックに保証はないんですよね。値段が高額であるにしろ、家でも保険をかけられるのに、トラックに保険がかけられないのは「なぜなのか」という疑問があったんです。保証があれば、買い手としても安心ですよね。ない理由を考えると、トラックは運転の仕方で変わるし、確立しづらいだろうなというのは分かってきました。

____そうですね。

小川:でもお客さんにとって保証はあったほうがいいし、営業マンも安心できる。片方でトラック市に加入しているものの、トラックを販売することに躊躇いがある加盟店さんもいらっしゃったんです。スポットで売ることはあっても、恒常的にビジネスとしては考えていない加盟店もいらっしゃる。皆さん、売った後のトラブルが怖いんですね。実際に販売した後に「50万円の請求書が来ちゃった」というようなことがあったので、トラック専業ではない加盟店も、積極的に販売できるような環境を作らなければいけないなと考えました。

実施するのに6年を費やしたTプロテクト

____なるほど。

小川:ただ前例は何もないので他の販売店さんは、どんな保証体制を整えているのかを調べました。そうすると、どこもまちまちなんです。中古トラックはノークレームノーリターンが基本です。とはいえ、「最低限ここまでは保証しなければいけないだろう」というラインを決めて「それを基にやっていこう」と考えたのですが、策定するのに1年、商品化するまでに6年もかかりました。

____かかりましたね。

小川:理由はその商品を受けてくれる保険会社が、どこもなかったんです。保険会社も実施するなら「1億円の保証金を積んでくれ」という話でした。もともと保証という意識がない業界で1年間1億円を供出するのは困難すぎます。頓挫していた期間もありましたが、それでも「どうしても作りたい」という思いがありまして、ある保証会社さんと話をした時に「なんとかやってくれないか」という話をしました。その頃には会員の数も増えていて、トラック市に加盟している中古トラック販売業者さんは、しっかりしている企業の集まりなんだ、ということに気づいてもらうことができました。

____ それは保証会社に対してですか?

小川:そうです。保証会社は乗用車のケースしか知らないので、トラックに保証をつけるための保証料の策定だったり、内容だったりを擦り合わせしていきました。それで出来たのが、このTプロテクトですね。現在は小型から4トン車までを対象にしていますが、今後は大型とその上物に対してTプロテクトを適用できるようにしていきたいですね。

今後の課題は、大型と上物の保証

____上物というと、ボディ以外にもクレーンなどですね。その適用範囲を広げられないのはやはり大型だったり上物の架装だったりすると、保証の費用が高くなってしまうということでしょうか。

小川:そうです。大型だとエンジンだけで何百万円もします。高額ゆえに保証料の設定が難しくなってしまうんです。例えば1台あたり保証料を「50万円積んでくれ」と言われたら、お客さんも二の足を踏んでしまうと思うんです。

中西:うん。それだと積まないですよね。これは新車の話ですが、ヨシノ自動車はディーラーをやっていて、ボルボ・ブループログラムといって5年間の保証プログラムを組んでいます。その保証は単体で200万ぐらい出て行く計算になります。200万という数字は「高いな」という印象があるけれど、5年間もオイル交換から定期点検も全て込みで200万なんです。それを60で割った時に、月額は3万円いかないくらいで収まります。そう考えるとTプロテクトも50万を分割して入れるのだとすれば入りやすいし、期間も延長できたりすると、より魅力的になるのではないでしょうか。見え方や売り方を変えてみるのも、手だと思います。

小川:確かに大型をやろうとすると、メンテナンスやメンテナンスリースは1回の支払いだけだと負担感が大きいので、分割したり、故障とメンテナンスの保証を組み合わせられると良いかもしれないですね。こちらとしても、どうしても大型はやりたいんですよ。保証料を高く積めれば、保証は必ずつけられます。でも、いかにコストを抑えて、ギリギリのラインで実現するかというところが、一番のミソなんです。会員さんも保証がつけやすくて、お客さんも払いやすい。「保証料を積めば良い」ということではない点に、こだわりたいですね。

関東の中古トラックは程度が良い!?

____そうすることによって、より中古トラックに目を向けてもらいやすくなりますものね。昨今の傾向ですとヨシノ自動車でも、中古トラックより新古車の方が、売れ行きが良いという傾向がありますよね。

中西:はい。でも、そこは地域差もあると思うんですよね。我らが商圏にしている関東は、さかのぼること平成15年から、排ガス規制に悩まされてきました。それによって平均10年間ぐらいは使えていた大型トラックでも、7~8年の代替えが平均になってきました。その意味では使う期間が短くなったので、中古トラックをわざわざ入れる理由がなくなってきたことが大きいです。中古トラックは新車より安いかもしれないけど、試用期間が短くなると結局はトータルのコストがあまり変わらないイメージがついてしまった。例えば弊社のお客さんでも、半分ぐらいは中古トラックを入れていたお客さんも、新車や新古車に変わっていくというように、首都圏のマーケットが変わってきちゃったんですね。

____なるほど。トラック市さんでもやはり中古トラックは地方が多いのでしょうか。

小川:うーん。いちがいに地方とは言い難い部分はありますが、首都圏のユーザーさんは新古車や年式の高い車両を購入される傾向は高いですね。年式は経っているけど、状態の良い中古トラックや安い車両というのは、地方で販売されるケースが多いような気がしますね。

____そういう流れがあるのかと思いました。例えば首都圏で使われた中古トラックが地方に流れやすい、と言うような傾向です。

小川:そういう傾向はあるでしょうね。

中西:もともとそういう流れはあるんですよ。地方の中古トラック屋さんにとって「関東は中古トラックの仕入れ地だ」という感覚も。関東は海風の影響や凍結防止の塩化カリウムの影響も少ないということで、車体の程度が一番良いと言われているんですね。それは日本全国的に見ても、そうらしいです。

小川:そうですね。関東は程度が良いというのが定説ですよね。

中西:だからこそヨシノ自動車が買取下取りした車体は、その車を業者さんに紹介したり、オークションに出したりすると良い査定をいただける傾向があります。

トラック市は「皆で良い商いをする場所」

____その流れも含めて、トラック市さんにとっては有利な市場環境と言えますよね。売り先が多様化すれば、それだけ高値で買い取ってもらえる可能性も高まるわけですから。

小川:そうですね。

中西:トラック市には乗用車の会員さんの割合は少ないにしても、取り扱っている業者さんをたくさん抱えています。我々がそれ以前にお付き合いしていた同業他社さんというのは100%トラック屋さんだったので、小型軽のトラックから乗用車までを社業にしている業者の皆さんとの繋がりは、トラック市を通じて本当に増えましたね。トラック市に入ったおかげで、その層に対しての認知度が飛躍的に高まりました。

____なるほど。分かりました。再びT プロテクトに話を戻したいのですが、Tプロテクトの本来の目的は、中古トラックに安心を求めたいということですよね。

小川:そうです。加盟店さんがしっかりしている会社さんばかりなので整備もできるし、トラブル率は低いと考えています。その上でより安心の上に、安心を重ねたい。買う側としてその選択肢が広がることは大きなメリットになる、と思います。

____トラック市さんの加盟店さんというのは、非常に業種も多様で弾力性がありますね。加盟できる基準というのは、やはり会社の規模を重視されていらっしゃるのでしょうか。

小川:確かにトラック市は誰でも加盟できるわけではないのですが、会社の規模で決めているわけでもないんです。結局、その会社さんの信用能力というか、会社の社長さんの人柄と志がトラック市に合うか、合わないかだけなんです。商売の上手な会社さんというのは、トラック市に加盟しなくても商売できると思います。もう少し有り体に言うと、「自分だけが儲かればいい」と考えている会社さんは、トラック市に加盟しない方がいいと思うんです(笑)。

____なるほど。

小川:やはり、そこは「みんなでいい商売をしようね」ということなんです。みんなで共に盛り上げていこうよ、と。入会する前は、だいたい私から出向いてトラック市についてご説明を差し上げて、ご納得いただけたらご入会いただくという形です。こういう会は無理やり、お願いすると必ず歪みが出てくるんですよね。例えばそれが会社の規模としては3~4名だったとしても、「やっていきたいんだ」「頑張るんだ」という熱意を持った会社さんなら、「全然問題ない」と考えています。ただ入会に関しては、広告を出して募集しているわけではなくて、会員さんの紹介か、企業さんの紹介がほとんどです。そういう意味では「ここならトラック市に合うよ」というフィルターにかけて紹介していただけるので、自然とクオリティが高くなっていく傾向は高いと思います。本当にありがたいですね。

中西:私も紹介で入った一人です(笑)。トラック市を紹介してくれた方はトラック業界に入ってきたタイミングも私と一緒で、年齢も一緒でずっと接点のある方でしたね。

お互いの得意・不得意を補う関係性

____もちろん加盟店同士の売買もあるんですよね。

中西:あります。トラックは特にそういう取引が多いんですよね。我々の親の世代でやっと始まったぐらいで、創業当時は同じ業者との取引は一切やっていませんでした。私が入ったくらいで7割が小売りで、3割が業販という感じでした。現在は売上のウエイトだけで言うと、業販の方が多いですからね。

小川:加盟店さんの構成だけで行っても180社いる中で、半分が在庫をもっていて半分は在庫を持っていない業者さんなんですよ。在庫を売りたいお客さんもいるし、在庫を持ってないお客さんは在庫を持っているお客さんから仕入れて、販売しているんです。これが全部販売だけのメンバーだと成り立たないんですよね。そこが現在のところ、ちょうどいいバランスになっているような気がしますね。

中西:もちろん志が一緒と言っても、各々の立ち位置が少しずつずれているからこそ、成立しているんだと思います。マーケットがちょっと違っているか、取り扱っている車種がちょっと違っているか。その違いがあるからこそ、うまくいっていて「トラック市はそのバランスがいいな」といつも思っています。ヨシノ自動車はどちらかと言うと、中型大型に特化しているので、小型の業者さんで大型の在庫を持ってないと言った時に、弊社の在庫を優先的に検討してくれます。その逆ももちろんあって我々も小型の新古車は持っているんですが、中古となってくるとなかなかないので、トラック市の共有在庫の方から探すわけです。それを紹介するとか、お互いに持ちつ持たれつでうまくやっている気がします。

____すべてそこに繋がりますよね。

小川:そうですね。それぞれの商売のスタンスがあるのでトラック市というプラットフォームをうまく使って、どんどん商売してもらえれば「我々としては有難い」と感じています。

中古トラックのブランド化とは

____これまで会員同士のトラブルなどはなかったんでしょうか。

小川:ほとんどなかったですね。大体、当事者同士で解決できる話だし、我々のところまで来るトラブルは年に一回あるか、ないかというところでしょうか。ほぼ、ないですね。

中西:さっき言った入り口でのフィルターが、だいぶ効いてるんですよ。そこでお互いの価値観が、分かり合えているんでしょうね。

小川:そこが分かり合えていると、「今回はうちが持つよ」とか。「次回は折半ね」というやり取りが当事者同士で成立するんですね。落とし所を見つけながら、やっていけるんです。

____なるほど。そういうトラブルがないとすれば金額も正価だし、出品されるトラックも信用できるということになってきますね。そこでトラック市さんが目指しているトラックのブランド化について、お話を伺えればと思います。

小川:中古トラックのブランド化というのは、そもそもしにくいですよね。新車のトラックを「どうブランド付けしていくか」は分かりやすいのに対して、中古トラックの場合は「何がブランド化なのか」と疑問がわいてきます。そんな中古トラックをブランド化するにあたって、まずやる気の高い会員さんが集まると「一つのブランドになるだろう」ということと、会員さんがしっかり整備して安心して乗れる中古トラックを提供するということ。まず、その二つがブランド化に当たると考えています。結局のところ、ちゃんとした仕入れをする、整備をするということは人材の育成に関わる事なんです。この人材が育てられないと、会社のクオリティは高められないんですね。その人材もまたブランド化していきたいと考えているわけです。最後は組織として付加価値の高い商品、まさに T プロテクトのような商品をブランド化していきたい。ブランド化していきたい方向性が4つあるんです。 

ブランド化のために欠かせない人材教育

____なるほど。会員のクオリティ、整備、人材、独自の商品の4つのブランド化なんですね。

小川:はい。では我々ができることはといえば、優良な会員さんを集めることと、せっかく入っていただいた会員さんが相互に交流できる仕組みをつくる。そこで全国を10ブロックに分けて、ブロック会議を行っています。会員さん同士が会って、情報共有ができる。それがひとつの施策ですね。人材育成の面では、我々は研修に力を入れていて、それぞれの会社の社員さんのスキルアップをお手伝いしたいと考えています。まず仕入れで言えば、トラックを目利きできるかということ。例えばトラックの修復歴を査定したり、上物の査定、クレーンだったり冷凍車だったり、上物も多様なのですべて査定できないといけないですよね。それらの研修です。これからやっていきたいのは板金と塗装です。この研修サポートもまたブランド化の一環です。会員さん向けのサービスで、パーツが欲しいといったニーズに対して、パーツをすぐ見つけられるような専用のサイトを作ったり、ブランド化をするために、それぞれのサポートを行っていきたいと考えています。

____そこはヨシノ自動車としても共通の課題ですよね。

中西:そうですね。まず価値あるトラックにしなければいけないですからね。だからこそ、この4~5年でトラック市の付加価値を提供するレベルが上がってきたと感じられています。極端な言い方をすると乗用車しかやっていない会社でも、今のトラック市に加入すると研修制度だったり、スキルアップサポートが充実しているので、すぐトラックを販売できる事業部として成立させることが可能なんです。その体制がもう整っているんですね。今の話で言うと、いろんな提携企業さんがトラック市と業務提携を行っている。保険会社さんから金融機関さんからリース会社さんもいるし、さっき言ったようにパーツを供給するようなセクションだったり、トラックという商品に携わる、いろんな事業者さんが提携しているので、トラック市に入れば、とりあえず道具は揃っている状態なんです。後は使いこなす能力を身につけていけば、企業として、社員として必ずステップアップが可能ですよね。

コロナ禍の中古トラックの販売状況とは

____そう言った若い企業を「応援したい」という気持ちがあったりするのでしょうか。

小川:それはめちゃくちゃありますね。特に生え抜きの会員さんは乗用車が多いですからね。せっかくトラック市に加盟しているのだから、もっとトラックのビジネスにも入ってきてほしいと考えているんです。

____中古の乗用車を販売している業者の方に、もっとトラックを販売してほしいということですね。

小川:そうです。その人たちがトラックを販売することで商談が増えれば、在庫を持っている業者さんから仕入れることも多くなりますし、トラックを専業にしているお客さんとももっと接点が増えます。「乗用車だけしかやらないよ」となると、接点はそこだけになっちゃいますから。せっかくトラックという商材があるので、ベースアップというわけではないのですが、いかにトラックをやりやすい環境を作ってあげるかが、我々の使命だと思っています。本当にやって欲しいんですよ。

____今後も提携企業は増やしていく方針ですか。

小川:そうですね。フラットに増やしていく方向で考えています。

____ちなみにこのコロナ禍に置けるトラック販売というのはいかがでしょうか。

小川:中西さんがこれまでの鍵人訪問記でおっしゃってるように、去年の5月から7月が一番影響を受けた期間だったですね。そこはどの業者さんも一緒じゃないでしょうか。夏以降は盛り返してきて、ほぼ去年並みぐらいまで戻ってきました。そう考えるとマイナスになった1、2ヶ月分がマイナスになってるということでしょうか。今のところ全体的には、ほぼほぼそんな感じだと思います。

____とはいえ、現在、緊急事態宣言下にあり、第二波の影響を受けているような気がするのですがいかがでしょうか。

中西:全体的には小川社長がおっしゃったような感じなんですが、弊社の場合は少しずつ販売数がジリ貧になっていたんですよね。5~7月でドンと下がったわけではなくて、むしろ3~4月ぐらいからじりじりと下がっていって、5月から前年よりトントントンと落ちて行って前年同月比で見ると5月から12月まではマイナスです。前年と比べちゃうと、今期はどうしてもマイナスなんです。現在はどうかと言うと、1月は12月よりも販売額は大きいし、2月は1月よりもさらに盛り返してきています。今月は稼働日数が28日と少ない割には前々年度と同じぐらいの販売を記録しています。

強いお客さんと取引をする意味

____片方で運送業界は、どこで訊いても「仕事が減って大変だ」という話を聞くんです。

中西:なるほど。それは弊社が強いというよりは、弊社のお客さんが強いと思うんです。別に狙ったわけではないのですが、コロナ禍になったこの1年で、売上は前年より下がっているわけですよね。お客さんはさらに影響があるはずです。全国にボルボの営業所が何十社とある中で、弊社ではボルボをノーマルで販売することはほぼない。その95%はカスタムしています。片方で95%をノーマルで販売しているディーラーさんも、いらっしゃるんです。考えあわせると同じボルボに乗るお客さんでも、お客さんのタイプが変わってくると考えるべきなのです。弊社は国産をご購入頂いているお客さんもそうなのですが、経営的な思考も、守るというよりは攻める経営をされていらっしゃるお客さんが多いんです。ただすごく感心するのは、その攻め方もものすごくバランスをとっている印象が強い。地盤を固めながら、片方で攻めの手を緩めないという感じですね。それがヨシノ自動車の業績にも反映している気がするんです。 

____なるほど。

中西:我々が、そういうお客さんと取引するために、どんなサービスを提供しているのかが鍵だと考えています。それはボルボであれば、ファストエレファントというカスタムラインですし、例えばコズミック☆トラック( https://youtu.be/poA95fKedqA )でも紹介されていましたが、中古のトラックに新品のボディを載せ替えて、新たな魅力を備えて販売する手法だったりします。例えばウイング車が運ぶものは限られていますね。積み込みのほとんどはホーム付けだし、ウイングを使用するときは、左右を開いてフォークリフトで運びますよね。そもそもシャシーが痛む可能性は少ないんですよね。重機系に比べれば走行距離は多くとも、状態の良いトラックが多い。だからこそ中古だけどシャシーの質は維持できているし、架装を新品にすることで、ほぼ新車に近いクオリティを出せるわけです。それで価格は新車よりお得に提供できる。  

____そうですね。

中西:もともとセルフのシャシーだったボディがボロボロだったんで、ボディだけ新しくしました、という話だと実はシャシーが痛んでいる可能性が高い。

____それまでの載せ替えは、そういうパターンが多かったですよね。分かりました。トラック市さんでは、この時期でもやはり攻めのお客さんはいらっしゃいますか。

小川:実際は、確かにこの状況下で厳しいというお客さんもいらっしゃるのですが、この時期でもしっかり購入されているお客さんはいらっしゃいますね。「この状況でも買うんだ」という感覚があるのかも知れません。数字としては多少落ちている部分はあるかもしれませんが、元気な会社さんは、この中でも攻めの姿勢で買いますよね。コロナが始まった時は「全然売れなくなってしまうのではないか」とすごく心配でしたけど。  

中西:去年の上期は、誰もが慣れてない環境の中で、どうしても先行き不透明感があったので保留にしていたんですよね。どうしようか迷った挙句、現状維持を選ぶ。現車を売ることもしないし、増車や代替えすることもない。でもコロナ禍から一年経とうという頃になって、実際のところ物流は動いているし、建築も止まってはいません。我々が生きている以上、物流はずっとあるし、建設もまたライフラインに欠かせないところなので、飲食店のように大きく減少することはないんですね。あくまでも足元がしっかりしていることが大事ですけれど、そういうところは代替えしたり増車したり動きがある。その動きをキャッチできるかどうかだと思います。  

中古トラックの“本当のリスク”とは

____なるほど。ではこのコロナ禍を経て、未来の話に移りましょう。今後の中古トラック販売というのはどう変わっていくでしょうか。

中西:その話題は真剣に考えれば、考えるほど悩ましいですね。 

小川:本当にそうですね。 

____やはり、よりインターネットの役割が高まっていくのでしょうか。それと中古トラックの付加価値を、どう担保していくかも大事ですよね。

中西:そう。去年、新規でお取引したお客さんのきっかけは、まずインターネットですね。8割ぐらいで、2割ぐらいは既存のお客さんのご紹介です。もともと新規顧客開拓を弊社はあまりさせていないということもあるんですが、このスタイルは10年経っても変わらないと思います。問題は中古トラックの価値が、10年後も同じ価値を生み出せるのか。どこかのタイミングで、現在のディーゼルエンジンが代替動力に変わらざるを得なくなってきます。それが、どのタイミングなのかは分からない。乗用車の10年後はたぶん半分はEVになっているでしょう。でもトラックにEVが合っているのかは分からないし、普及していることも想像しがたいですよね。

小川:その切り替えのタイミングによって、大きな変化が起こりますね。

中西:タイミングによっては、現在のディーゼルエンジンの価値が、一気に下がる可能性がある。スクラップ同然になる事態もあるかも知れない。

小川:法規制の部分で「もうこれは売れない」となるのが一番怖いですね。

中西:現実的に突然、そうなることは考えにくいけれど、逆に新興国は新しいテクノロジーをインフラに取り入れるのが早いですよね。弊社のアフリカのウガンダ事業もそうですけど、現地で固定電話は一向に普及しないけれど、スマートフォンはもうみんな持ってるんですよね。電子マネーもそうです。新興国の問題で、偽札が多いなどの理由で普及する環境はあるにしろ、現在だと東南アジアに行けば屋台だって電子マネーで決済できますよね。

小川:そういうところは、日本の方が遅れていますよね。

中西:そうすると今のトラックは、都市部で5年使い、その後に地方に持って行って10年以上使う。その10年落ちのトラックを新興国に輸出するというのがビジネスモデルとしてある訳です。実際に我々もそれを商売にしている。その流れができなくなる可能性がありますよね。今までは10年以上経ったトラックでも「欲しい」というマーケットがあるから価値があったわけで、それが無くなった途端に価値はゼロになってしまいます。そうなると自ずとトラックの価値は、全体的に下がっていってしまいます。例えば平成27年頃にミャンマーで中古トラックが輸入禁止になった時の市場の持ち込みは、すごかったんです。フィリピンでも年式規制が入って輸入が滞りました。それをきっかけに中古トラックの値下がりは始まっているんです。

中古トラックに対するアプローチを変えていくこと

小川:環境的にも、中古トラックがどんどん増えている状況ではないです。私が入った12年前ぐらいは、皆さん普通に中古トラックを購入されていましたよね。オークションでも潤沢にあるという訳ではないけれど、現在ではそもそもオークションで買うトラックが少なくなっています。今まで通り、「良いトラックが出ていたから仕入れをして、手数料を乗せて売りました」というビジネスモデルは成り立たなくなりつつある。そこで各会社さんの技術力や修復力が問われる。手をかけて直し、付加価値をつけて売る力をつけて行かなければいけないなと考えています。  

____さっき中西社長がおっしゃっていた話に通じていますね。

中西:さっき言ったように、ディーゼル以外のどんな動力になるのかは、この10年でガラッと変わることはないと思っています。しばらくは、まだ安心できるところもあるんです。期間的に考えて、この10年間をどう考えるかと言った時に、やはり中古トラックをリユースする、リニューアルする力が重要になってくると思います。その能力をどう身につけていくのか、今後の中古トラック業者のキーポイントになってくると思いますね。我々は、一方で中古トラックを金融資産としても見ています。今時のお客さんは現金一括買いをされるようなお客さんもいらっしゃらないし、リースする時にそのトラックに担保価値があるからこそ、リースを組んでくれるわけです。「この車、1000万しますよ」と言った時に、1000万円のお金が払えない。せめて60回の分割払いをするオートローンしか組めなくても、リースすることによって5年後でも500万円の価値があるとわかれば、実質として考えれば5年間で500万円を払える能力があればいいわけですよね。

トラックのサブスクリプションと、ドライバーのステータス

____その通りです。

中西:そういう価値の提供の、アプローチを変えることができる。今まで1000万円を集めなければ買えなかったトラックを、手に入れるために、分かりやすくハードルを下げることができるわけです。そうやってトラックを使った商売をする人たちに裾野を広げていければ、結果的にマーケットを広げていく可能性が、人口減少をしているこの世の中でもあるのではないかと考えています。運送会社さんだと、もともとドライバーでそこから独立される方が多くて、一人で始めようと考えると、お金を貯めるところから始まるかもしれませんが、せっかく貯めたお金を全てトラックに注ぎ込むのはリスクが高いわけです。だからこそ初期投資を、なるべく低くできるようなアプローチが求められるわけです。

____なるほど。そう考えるとトラック市に加盟して、販売業者を始めるというのはリスクが低い一つのやり方にもなりえますね。金融資産として考えれば、金融業者だって不動産業者だって参入できる気がします。

中西:いや。現代の感覚で言うと、サブスクリプション(定額制サービス)ですね。使いたい時だけ、使いたいように使う。使わなくなったら「はい。戻していいですよ」と。我々がやっている短期リースもそれに近いですよね。使いたい期間だけ貸し出すのと同じですから。運送会社さんから考えれば、いまどき中型だって800万以上するわけです。大型だったら1400万ぐらいするわけですよね。その初期投資は、非常に大変ですからね。

____確かに。そもそも運送会社をするにあたって、国内の参入障壁が高いんですよね。

中西:そう。ちょっと話は違うんですが、大型の運転免許も二種免許のようにより難しくすることで、ドライバーさんの給料やステータスを上げていけば良いと思っています。その代わりに一般貨物事業の取得は、もうちょっとハードルを下げて、より起業したい人たちを募るとトラック業界も良くなっていくと思うんですよね。

小川 広太郎(おがわ こうたろう)様
埼玉県川口市出身。平成15年、西華産業株式会社に入社 平成21年5月、株式会社トラック市に入社。平成26年9月、代表取締役に就任。現在に至る。

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