ヨシノ自動車を引き継ぐ前

____会社を継がれる前はヨシノ自動車にどんなイメージをお持ちでしたか。

イメージはあまりなかったですね。単純にクルマが好き、バイクが好きという普通の思春期の男子ではあったので、親の会社に工具や機材があって、クルマを改造する場所としてちょうど良かったんです(笑)。そういう意味で工場があった、というなじみ深い場所ではありますが、社業に興味はまったくなかったんです。ただ「将来は継ぐだろう」という漠然とした思いはありました。逆に言うとそこに拒否反応もなかったんです。実は私は大学が理系だったので、全然違う会社に全然違う職種で就職してました。その就職をする前に、現在の会長に「将来、この会社(ヨシノ自動車)を継ぐ気があるか」と訊かれました。正確に言うと、そのとき継がない理由はなかった。厭だという明確な理由が見つからなかったので、返事として「ある」と答えたのが22歳のときだったんですね。もともと今の会長は30歳までメーカーの日野自動車にいました。それで30歳のときに、ヨシノ自動車に入ったんですね。過去にそういう実績があったので、僕も30歳前後ぐらいまではどうぞ好き勝手にみたいな話もあり、「6、7年はあるな」と思って違う仕事をしていました。

____社長はプログラマーをされていたんですよね。

はい。私がやっていたのは世の中に流通するソフト開発というよりは、精密機械のプログラム、開発者が使うためのアプリケーションの開発です。作ったアプリケーションを使うのは100人もいない、極めて専門的で特殊なアプリケーションです(笑)。

_______そのときの経験が、現在の仕事に生かされているようなことはありますか。

ないですね。とはいえ、大きく言えば、モノ作りに通じているのでそこは理解しているつもりではいます。ただヨシノ自動車としても、ハードウェアのモノとして作ってはいないので、仕事の中心はあくまでもソフトなんですよね。例えばいくつかの野菜があって、それを炒め方だったりゆで方だったり味付け方を変えるだけでこんなに美味しい料理になる、というコンサルタントとしてのお手伝い。ヨシノ自動車が付加価値をつけるのはそこなんですよね。現状もそうなんだけど、明確ではない。ヨシノ自動車のトラックはどこよりも安い訳ではない(笑)。でもヨシノ自動車で購入してくれるお客様がいる。そのひとつの要因はわかるんです。ヨシノ自動車が複合的にビジネスを展開していて、地元の土建屋さんや工務店さんなんかは「ヨシノさんは何でもやってるから、相談すれば楽に決められる」とこれまで通りヨシノ自動車と取引をしていただける。それはヨシノ自動車の魅力だと思うんですよね。ある近くの土建屋さんは、年度末の繁忙期になるとクルマが足りなくなります。それだったら、「トラックをレンタルで出しましょう」と言える。その車両保険や積んでいる荷物にかけられる保険もいろいろあります。具体的に相談を受けられれば、ヨシノ自動車一社で解決できる手段を持っている。そこは評価いただいている点かと思います。